興味深い判決が出た。

要約すると、インスリン投与者で働けている方が「障害年金2級」に該当するとされた判決だ。

障害認定基準では、
「インスリンを90日以上投与」してて、「意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもの」は「3級」にするとなってる。

この「3級」は、本件のように幼児期に初診日がある方は対象外になってしまうため「不支給」になっていたのだろう。

そして、病状が重要な要素になるのだが、
この記事では「16~17年に意識障害を伴う重症血糖症が16回発生」とあり、2年間で16回なのか、年度(1年間)で16回なのか不知だが、「3級より重篤」との記載から後者だと推察すると、かなり血糖コントロールが難しい状態なのだと考えられる。裁判長も「実際に日常生活に著しい制約を受けている」と判断しているようだ。
つまり、3級以上2級になるかの裁判だった。


今まで関わった患者さんや医師から伺った話からすると、この「重症低血糖で自己回復ができない状態」というのは、
気持ち悪いなぁとしゃがみ込むので、バタンと倒れることはあまりないけど、家族等にグルカゴン注射等をしてもらわないと自分では回復できない状態だそうだ。
回復できないまま時間が経つと低血糖脳症に至って脳障害から意識障害・昏睡等になり、命にかかわる場合もある。頻発の場合、1人にしておけない感じだ。

同じく倒れてしまう病気として思い浮かぶのが、てんかんだと思う。
てんかんの障害認定基準は、簡単に申し上げると、「意識障害を呈して倒れる発作が年2回以上あり日常生活に著しい制限がある場合は2級」とされている。
てんかんは、倒れてしまっても頭を打ったりしないで横になることができれば、起きた時には回復しているそうだ。

それに比し、重症低血糖で倒れ、自分で回復できない状態の場合、誰かの看護(介助)が必須な状態なのに、「月に1回以上(年12回)で3級」とは、てんかんの「年2回で2級」に比し厳しすぎるのではないかと思っていた。

前述のインスリンの認定基準は、平成28年にできたのだが、この「自己回復できない重症低血糖が3級」の記載は解せなかった。その他のインスリン基準は妥当と思えたが、この点についてはいつか論議が為されるだろうと思っていたのでやはりと思った裁判だった。

今回の判決は地裁レベルなので、控訴されるかも知れないですが、違和感を持っていた論点なので、今後も注視していきたいです。


【参考】

NHK News Web
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220726/k10013737111000.html


インスリン認定基準
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-15.pdf

てんかん(精神)認定基準
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-8.pdf

平成28年改正
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/shougainintei.files/leaflet4.pdf